災害に強い地域づくりを目指して〜貧困住民に配慮した地域防災・開発プロジェクト始動(第3回)【シャプラニール】
【シャプラニール=市民による海外協力の会】
◆貧困住民に配慮した地域防災・開発プロジェクト(ネパール・チトワン郡)◆
シャプラニールでは、ネパールにて「防災」という観点から新しいプロジェクトが始まりつつあります。今回はネパールの新規「防災」プロジェクトの活動地のひとつ、コビラシVDC(※1)を襲う災害の特徴について、お伝えします。
<社会的弱者と災害、ジェンダーの視点>
一般に言われるように、自然災害は時や場所を選びません。ただその災害が、すべての世帯やコミュニティへ等しく影響を与えるかというとそれも正しくありません。
例えば川原や低地など、条件の悪いところに住むことを余儀なくされた貧困層は、河川の氾濫の影響を真っ先に受けることになります。そして、もともと多くを持たない人々が、災害の結果さらに厳しい状況に陥ることは決して珍しくなく、毎年のようにこの悪循環が各地で繰り返されているのです。
つまり、貧困層にとって災害は事故や病気と同じように常に生活を脅かす要因の一つであると言えるのです。また、災害は女性の負担を増加させるという側面も忘れてはいけません。災害が発生した直後から、家畜や家財を安全な場所に移動し、食料や水、燃料の確保に奔走、子どもや年寄りなどの世話など、女性たちは忙しく立ち働きます。
しかし、それらを認識し、さらに女性特有の問題に配慮したような救援復興活動が行われることはまれでした。女性の持つ力を正しく評価し、防災計画を作成する時点から、男性と女性の双方の視点を取り入れていくことが必要とされています。
<森林伐採と災害発生の関係>
かつて80カッタを所有していたダル・バハドゥール・タマンさん(男性)は、1977年からコビラシに住んでいます。1980年以降、度重なる災害によって土地を失い、現在所有しているのは10カッタのみといいます。
「これまで何度も別の場所へ移住しようと考えたけれど、経済的な余裕がなくて実現しませんでした。災害が起きるたび、NGOや村役場などが救援物資を配布しても、いつもうちは配布対象の基準から外れてしまいなにももらえません。もし政府が安全な場所に土地を確保してくれさえすれば、あとは自分でなんとか出来ると思うのですが。もろい地質と、人口が増えたことによって森林が破壊されたことが、災害の増加している原因ではないかと考えています」
もともと丘陵地のため耕作可能な土地が限られているコビラシでは、副収入として女性たちによる酒造りが盛んです(※2)。これには蒸留のための薪が欠かせず、森林破壊の一因になっているのではという指摘があります。
日々の煮炊きにも薪は必要なため、森林資源が枯渇するようなことがあれば人々の生活自体が立ち行かなくなってしまいます。
現実に、薪集めは女性たちの負担としてのしかかっているのです。
このような危機感から、住民が集まって森林を管理する組合を最近3つ結成しましたが、政府からの許可が下りず、いまだ思うような活動が出来ていないということが調査でわかりました。
第二回で報告した通り、コビラシは野菜の栽培に適した土地質であり、しかも郡庁バラトプールへのアクセスも悪くありません。森林資源に過度に依存しない生計手段として、標高をいかした野菜栽培、トマトケチャップやアチャール(漬物)などの食品加工、農地のない家庭では、ヤギや豚などの肥育、竹を使ったカゴ作りなどのアイデアが村人から出されています。
森林管理組合の活動が軌道にのり、植林などを含む森林資源の管理および活用が進めば、そこから得られる収入を地域に還元していくことが可能になり、住民主体の防災という観点で非常に効果的と思われます。
※1 VDCとは、
Village Development Committee の略。村落開発委員会。地方行政単位のひとつ。ネパールは75の郡(district)に分けられているが、それぞれの郡に数十から百程度のVDCがある。日本でいえば町や村にあたる。
※2
酒を売って得た収入で、男たちがビールやウイスキーなどを町で飲んでくるという話もあります。

